阿部裕一さん(37)と夕子さん(37))夫妻には葵裕奏(あゆか)ちゃん(1歳4ヶ月)がいる。裕一さんは学習塾の教師,妻の夕子さんは小学校の事務をしている。一家は福島市渡利地区の静かな住宅地に一戸建ての借家に住んでいる。市内でも汚染が酷い地域だ。
阿部夫妻は福島第1原発事故が起こるとTVニュースを見続けた。12日、TVの生放送で1号機の爆発の映像がながれた。裕一さんは「大変なことになるぞ」と思った。しかし、テレビではコメンテーターがガス抜きだと言っていた。誰が見ても爆発なのに。それでも事故による汚染の事を伝えるニュースは流れてこなかった。
3月15日午後4時頃、インターネットで福島の放射線量が高くなったことを知った。
我が子の事が一番心配だった。16日は家に閉じこもり、17日新潟に3人で逃げた。何はともあれ、子どもを守らなければという思いだった。4月3日に家にもどってきた。
4月21日初めて自分で線量を測ったら、屋外で毎時4,1マイクロシーベルトあった。
我が家では2階の方が線量が低いと思っていたが、実際は1階のダイニングルームが一番低かった。何度も何度も部屋を掃除したが放射線量は下がらなかった。もう、気が狂いそうになった。一番線量の低いところにゲージを付けて、この子の生活空間にした。時々は外にも出しますが、ほとんどをこの空間で過ごしている。抱っこしていると上の方の線量が高いので怖い。そんなに神経質にならなくてもと言うが、何かあったらどうしようと思う。「この子が大人になった時に、福島出身の女の子だから,なんて言われたりしたら。東電に爆弾でも仕掛けてやろうかと思っちゃう」
外で動き回れない分、体力が余っちゃうんですよ。夜の寝付きが震災以来良くない。夜中に起きて明け方まで眠らないで昼間寝てしまったり。生活サイクルがおかしくなって親も寝ないので、体調を崩して血圧が上がりっぱなしですよ。
福島市のHPに原発の事をインターネットに書き込むと「書いてくれるな」と言われた。でも、福島の話題を書き込むところでしょ?現実から目をそむけたいんじゃないでしょうか。渡利地区で取材や放射線を測定している人を見かけると「止めてくれ」と騒ぐ住民がいる。これ以上線量が高いのを見たくもないじゃないですか?
我々が引っ越さないのは物件がないからですよ。浜通の人が入るために自治体に借り上げされているので。福島は汚染されているので,他のところを探そうとするんですが、冬の通勤の事を考えると遠くて雪のたくさん降るところは怖いんですよね。
お金が欲しいのではなく、ただ、ただ、普通の生活をしたいだけなんですよ。
それができなのであれば、それに変わるものを何とかして欲しいと言っているだけ。
「区切りを付けたいのだけれど原発はいつ終わるのか。原発問題が無ければ、何も問題なく次に進めるのに・・・・」この子もすごいストレスですよ。大きなスーパーに連れて行ってそれ走らせて、発散させるんですよ。
国も県も市も何もしてくれない。
もう4ヶ月ですよ。事故以来、洗濯物は室内干しで、家の窓は事故以来ずっと開けていませんよ。現在、玄関先の放射線量は毎時2~3マイクロシーベルト前後ある。